「へえー!透子ちゃんって意外と料理できるんだ!ほんっと意外と!家事とかなーんにもできない甘ちゃん娘だとばっかり思ってたー」
私が包丁を握って野菜を簡単に切るだけで、遊馬くんは大層大袈裟に驚き、キリちゃんは涙ぐみながら拍手をして、オウくんは何故か満足げにふんぞり返っている。
褒められている気がしないことだけは、確かだ。
力任せに白菜をザクザク切っていると、オウくんの影が落ちて、ふと手が止まる。私の切った白菜の欠片を持って、退屈そうに言葉を漏らした。
「だけど大雑把。この白菜とか、でかすぎ」
「あー、透子は調理実習の時も大雑把だって先生に言われてたよねー」
「あ、それ覚えてる。ハンバーグだろ。玉ねぎもめっちゃ荒くて調味料も目分量だから肉団子みたいになったやつ」
「あはっ、それそれ!こんな大人しそうな子があんな肉団子作るんかってめっちゃ笑ったわぁ」
オウくんは、ポイと白菜をボウルに戻して、キリちゃんの座っているソファに戻って行った。
そうして思い出話なのか、単に私を貶しているのか、二人で盛り上がっている。オウくんは笑い声を上げることも大きな声で話すこともないけれど、穏やかな表情でキリちゃんと普通に話をしていた。
私以外の人だったら普通に話してるのに、私とは普通に話してくれない。
向こうを見ないようにして、私は懸命に白菜に向き合う。大雑把だって言われたから、ちょっと丁寧に切ってみる。

