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俺はできることなら、この姿を見ずに大学を卒業したかったなぁと、地面にしゃがみ込んでうわあああんと声を出す男を眺めながら思うのだった。
「なんで俺、あいつに彼氏作れとか意味分からんこと言っちゃったんだろおおおお」
「さあね〜?お前が相当こじれてるからじゃない?ネジネジだからじゃなぁい?」
早くこの時間を終わらせてくれないと、いつまで経っても俺はここから動けないし、人が来ないように見張ってないといけないし、普段は落ち着いててミステリアス系のこの男の泣きべそ姿を嫌でも見なきゃいけないし、しんどすぎるんですけど。
ガバッと男が顔を上げて、半泣きの面を俺に見せてくる。
男の俺でもこいつの顔は綺麗だなぁと思う。生まれ変わるならこいつの顔になりたいけど、こんなにこじれたくないなぁ。
「どうしよう。あいつに彼氏が出来たらどうしよう!」
「知らねーよ。自分で蒔いた種だろ?てか何がどうこじれて好きな女に"彼氏作ってみろ"とか言えちゃうのかボク全然分かんない」
「俺も分かんない!」
あのさぁ、肩よりちょっと長い髪でハーフアップにしてる髪型が似合うのって、顔がいい人しか許されないからね?それ自覚してる?
自覚してるんだったら今すぐその情けない面どうにかしてくれないかなぁまじで。

