小学校、クラスの中で足が一番速くて、九九を覚えるのが誰よりも早くて、やんちゃをして先生によく怒られていて、いつもみんなの真ん中にいて、女の子はみんな彼のことを好きで、当然のように私も好きになった。


クラスのみんなが彼を好きだったのに、中学生になると次第に人数は減っていった。それは単純に人気がなくなったとかそういうことではなくて、彼を本気で好きになる子が残っただけだった。

私もその中の一人で、ずうううっと彼が好きだった。

彼を好きだと軽い気持ちで言う女の子が少なくなった代わりに、彼には沢山のカノジョができるようになった。

昨日まで3組の誰々さんと付き合っていたのに、今日は5組の誰々さんと付き合う。


当時の私は"付き合う"ことがどういうことか分からなかったけど、彼の部活が終わるまで待って、一緒に帰って、たまに一緒にお昼を食べて、他の女の子よりも親しげに話す。

そんな関係が、ものすごく羨ましかった。



高校になると、さすがに私とずっと同じ学校に嫌気が差したのか、彼は益々素っ気なくなった。

帰り道、彼とカノジョが人気のないところでキスをしているのを見つけて、このまま死んでしまうんじゃないかと思うくらい心臓が痛くなった。


私には笑顔すら向けてくれないのに、優しく女の子を触るその指一本一本が、羨ましくて堪らなかった。