僕に人生で初めての恋人ができた。大学のインカレサークルで知り合った女の子。彼女は背が低くて可愛い系の女の子で、一見気が弱そうだけれど、彼女の中には強い芯みたいなものがあってそこの僕は惹かれた。今までの僕なら片思いのまま気持ちを伝えずに終わっていたのだろうけど今回は違った。彼女はすごく強い人で、僕とは違って明確な人生の明確な目標みたいなものをもって生きているように思える。でも、その裏に何か得体の知れないものを飼いならしていて、何かのきっかけで簡単にその怪物を解き放ち、僕の手の届かないところへあっという間に行ってしまうような気がした。だからなのだろうか、僕は自らの思いを伝えた。告白は決してロマンチックではなかったし、今思い返せばとても情けない内容だったけれど、彼女からの返事はその場で聞くことができた。
 「私で良ければ。こちらこそよろしくお願いします」
 それからの日々はとても明るかった。大学が違ったから一緒に帰ったりとかしたことないけど、週一回ぐらいの頻度で映画を観に行ったり、動物園や水族館など定番のデートスポットは一通り試した。だが、そんな楽しい日々の中でも僕は彼女にずっと些細な違和感を覚えていた。
 「あなたに伝えておかなきゃいけないことがあるの」
 付き合い始めて2か月が経とうとしていた時、彼女はそう切り出した。
 「本当は付き合う前に言っておくべきことだったけれど、言えなくて」
 彼女は震える声で言った。肌寒くなり始めた10月の夜のことだった。帰りの電車を待つ駅のホームで僕は心臓をギュッと握りつぶされるような気分だった。
 「今は言えないかも。でもちゃんと話すから」
 僕は頷くことしかできなかった。その日の夜僕が眠りについたのは朝日が昇る頃だった。