青春の花は素顔に咲く


 白銀の美声がその場に響いた。
 まるで魔法にかかったように、別世界に飛んだような気さえした。
 それぐらい、素晴らしい歌声で。

「はあ、かっこいい」

 思わず本音が口から洩れて慌てて口をふさいだぐらいだ。
 こりゃ、日本中の女の子が夢中にもなるはずだ。やばすぎるもん。
 白銀が歌い終わりこっちに歩いてくる。

「終わったぞ、黒野」
「え、あ」

 あたしはしばらく呆然とした後白銀の顔を見てのけぞる。

「本当、大丈夫か?」
「あああああああ、あたし、ちょっと散歩してくる」
「え? 大丈夫か? 土地勘ないだろお前」
「平気! テレビ局の周り走るだけ」
「散歩じゃないのかよ」

(なんかもう頭がごちゃごちゃするし、走って冷静になろう)

 じゃないとあたしが持たない。はあ。
 この心臓の音、大きすぎて白銀に聞こえてるんじゃないの?
 やばすぎ。

「っはあ……」