「黒野!?」

 あたしが叫んだので白銀が驚いて声を上げた。やばっ。

「なんでもないっ」

(やばいやばいやばい)

 理性がうまくきいてくれない。
 冷静になろうと教科書を開くけど、目が滑る。やばい。頭に中身が入ってこないよ。

「死にそう」

 辛すぎ。泣きたい。

「本当、大丈夫か黒野」

 そしてやっぱり心配してくれる白銀。逆効果なんですけどね!?
 顔が近い、近いよー!
 ひいん。

「寄ってこないで!? その綺麗な顔で!」
「? 本当に大丈夫か黒野……」
「大丈夫だから! 大丈夫だから!!」
「まあ、そういうならそうなんだろうけど」
「……はああっ……疲れる」

(恋愛って、すごく怖いものなのかもしれない……)

 自分が自分じゃないみたい。白銀を意識しだすと耐えられなくなってきた。逃げたい。あああああ! そもそもだ。白銀はアイドルであるからして両想いなんてものはあり得ないわけで! 釣り合ってないし! あきらめろ! 割り切って感情を捨てるんだ! あたし! がんばれ! がんばるんだあたしっ!

「黒野、顔が怖い」