「へぇ、待合室個室なんだ、豪華だねー」

 お菓子や冷蔵庫もあるし。
 シャワールームの看板も有る。
 やばい。いい扱いされてるじゃん。

「ああ。いつも一応な」
「すごいじゃん。KAKERU。本当に国民的アイドルなんだね」
「……そう、言ってもらえているな。ありがたいことに」
「で、撮影までどれぐらいの時間があるの?」
「まあ、支度を始めるまで一時間はあるな」

 意外と長い時間だなあ。
 よし。 

「じゃあ、勉強できるじゃん、やるよ」
「助かる黒野」

 あたしは持ってきたカバンの中から筆記用具などを取り出す。
 白銀もそれに倣う。

「どこがわからないの?」
「それがどこがわからないぐらい何もわからない」
「…………」
  
 嘘でしょ?

「呆れるのはわかるが、黙られると怖いんだが」

 困った顔をしたいのはあたしだよ白銀……。はあ。 

「まあ、復習からやるのが無難そうね。いつから芸能活動?」
「物心ついた頃には」
「へえ」
 
 そんなに長いんだあ。

「両親がオレの居場所になるように、と」
「ってことはロクに勉強できてないんじゃ」
「そうかもしれないな」
(これは結構大変かもしれないぞ)

 小学校からやる羽目になりそうだ。
 白銀は真面目な顔であたしを見る

「すまないな。黒野。努力はするから」
「うん。がんばって。じゃあとりあえず手あたり次第やってみて実力を図ろうか」
「ああ。助かる」

 こうして、あたし達は撮影が始まるまで一生懸命勉強した。