初恋は報われないというけれど、

1組の私や甲斐谷と、5組のハルミちゃんは合同授業もほとんどないため、滅多に顔を合わせることがない。



甲斐谷はバイト先のコンビニが一緒っていう共通点があるから、しょっちゅう顔を合わせてて、おまけに好きになっちゃったみたいだけど、

部活もバイトもクラスも違う私と彼女に面識なんてもちろんない。



私が一方的に、甲斐谷から話を聞いているから彼女を知っている。


私たちの繋がりなんて、それだけだ。



ただ、甲斐谷の話を聞く分には、すごくいい子なんだって。


黒髪のふわっとしたロングヘアーに、色白の肌、まるで天使みたいだと、甲斐谷は頬を緩ませて語っていた。



「私のこと好きみたいだから、次ができるまでのキープでいいかなって」

「ハルミ最低〜」

「顔はかっこいいしね。一緒に歩くの恥ずかしくないから丁度いいの」



天使は、天使のままでいてほしかったな。



「でも、話は全然面白くないし、この間くれた誕生日プレゼント何だったと思う?花束だよ?ダサくない?」



甲斐谷が鈍ちんのままでいるように。




「それはないわ〜。花束とか付き合ってない相手に貰っても迷惑だし、重いよね〜」

「そうそう!だったらもっと実用性のあるもの欲しかったな〜。財布とかさ〜。

ま、キープしてる時におねだりすれば済むからいいんだけどね」





天使が天使のままだったなら、私もただただ次の恋を夢見るだけでよかったのに。


天使が天使のままだったなら、甲斐谷の幸せそうな顔を笑って誤魔化して見続けられたのに。