「……………ごめん」
「え?」
カイロをぎゅっと握りしめていると、甲斐谷は突然謝った。
久しぶりに聞いたその言葉が、何に対してなのかわからないのは今日が初めてだ。
「さっきラ○ンで、アツコから全部聞いた」
甲斐谷の手短な説明に全てを理解する。
アツコが何を言ったのか。
それはきっと、あの日起きたことの一切だろう。
「なんで、何も言わなかったんだよ」
悲しそうな甲斐谷の声に、私まで悲しくなる。
アツコのばか。
何で言っちゃうのさ。
甲斐谷のこと、傷つけたくなかったのに。
心の中でアツコに不満を言うけれど、アツコは当然何ともないんだ。
憎らしい。



