初恋は報われないというけれど、

授業も、昼休みも、HRもなんとかやり過ごし、憂鬱だった時間はあっという間に終わりを迎える。



「気をつけて帰るんだぞ」



そう言って教室を出て行った担任は、今から会議でもあるんだろうか。


目が死んでいたよ。目が。



はぁ……私も帰るかー。


家に帰る途中に、コンビニでケーキを買って、お父さんが今日は早く帰るって言ってたから一緒に食べよう。



年々質素になる誕生日だけど、ケーキさえ食べれば、それだけで一矢報いた感じがする。



鞄を背負い、靴を履き替える。

昇降口を出れば、今日は一段と風が冷たかった。






「マユ」



ほんの10日間ほど。


だけど、ずいぶん長い間聞いていないような気がした。



昇降口を出てすぐ、後ろから呼ばれた私の名前。



振り返れば、今日あれだけ目が合わなかったはずの甲斐谷が私を見ていて。



それだけで嬉しくて、涙が出そうだった。