「でも、これだけは約束してください」



ヤクザと約束なんざ、笑える話だよな。



「俺を守ろうとはしないでください。俺を守ろうとして碧さんの身に何かあったら元も子もないですから。俺は似ているだけで別物、分かっているとは思いますが、それだけは約束してください。」


頬から手を離し、冷たく感情の乗らない声で話す。


碧さんを守れないならここにいる意味が無い。


碧さんを置いて洗面所を出る。


珍しくリビングのローテーブルにタブレットとスマホが置いてある。

あたしに対しての警戒心が薄くなってるのか。


……でも、あたしが御庄藍であることはバレちゃいけない。


全てが終わるまで、あたしは久遠藍人でいなければいけない。


碧さんが上がってくる前に寝室に向かい、ベッドに入る。

色々考えていたら、いつの間にか寝ていたようでベッドが軋む音で目が覚めた。



「起こしたか」


「……すみません、寝てました」


「いいよ、寝ていて」


仰向けになって碧さんの方を見ると、碧さんはあたしの頭を撫でた。


電気を消して、あたしの首の下に腕を入れて抱きしめるような体勢。


あたしは碧さんの方に寝返りを打って、碧さんの胸に額をつけた。