i という男は2人を手こずらせ、その上、李麻さんが i を殺ることを諦めて、自ら命を絶ったという。
そんな i という人物を、碧さんはそばに置き、親父は容認したという。
俺に笑いかけるその男は、久遠藍人。
俺はその顔を1度見た事がある。
御庄榛人にそっくりだと言うのは本当だったんだな。
碧さんは、似ているからこいつを傍に置くんだろうか。
だとしたら、リスクが高すぎる。
目的は?後ろ盾は?
指示をしている人間がいるのか。
何も分からない人物。
どうせ親父は、面白いぐらいにしか思ってないのだろうが。
碧さんに呼び出され、仕事の話をし終わって碧さんと広間に入れば、そこに久遠藍人は居なかった。
騒いで飲んでいた奴らが俺たちに気づいて静まり返る。
「藍人はどこにいる」
感情の乗らない声。
碧さんは部下の前ではいつもこう。
温かさのあの字もない。
「岸と外に行きましたよ」
南も淡々と答える。
「そうか」
碧さんはそう一言だけ言って広間を出ようとする。
が、
「碧さん、なぜよりにもよってあいつなんだ?」
もぐもぐと食事をしながら、こちらも見ずに聞くのは有栖川。
碧さんも振り返ることなく、
「いずれ分かる」