i という存在は、軽くは知っていた。


あの人


俺の親父が、碧さんと李麻さんに任せた仕事。

その仕事が難航している理由が i だと知った時は、さすがに興味を持った。



碧さんはやくざにしては人当たりが良くて、俺や音羽が幼い時よく遊んでもらっていた。


確かに目付きや纏うオーラは一般人とは違うものだったけれど、俺たちの周りはそういう人しかいなかったから、それが普通だった。


そんな碧さんは一人で多くの仕事を成し遂げ、親父の信頼を受け、若頭になった。


碧さんは自分の父親を、俺の父親に殺されたのにも関わらず、鬼龍灯志の元に仕えていた。


昔、その理由を聞いたことがある。

その時碧さんは、ガラス玉のような何も映らない瞳をして



「あれは、本当の父親じゃない」



そう呟いた。

その後、碧さんが養子だったということを知った。



また、李麻さんは負け知らずで、ましてや素手の喧嘩で負けたという話を聞いたことがないほど強い人だった。


全盲なため、目の動かし方が健常者と違うこともあり、その上、目が見えているような動きをして健常者の相手に軽々勝ってしまう李麻さんは恐怖の対象だった。


けれど、本当は愛情深い不器用な人なのだと知った時、彼について行く者が増えていく。