i -アイ-





「……え…っでも、危険じゃないって」



ああ、危険じゃないよ。


危険じゃないけど。



「椎名さん、おいで」



椎名さんを抱き寄せる。

あたしの体は震えていて、力が入らない。



「危険じゃない。だから、怖がらないで」



あたしはそこから立ち上がり、精一杯椎名さんの手を握って歩く。

息が上がる。

体温が上がる。


「あ、藍人くっ……」


駅に着いて、そこで手を離す。


「ここからは……1人で帰れるね。人が、っ……多いから気をつけて」



やっぱりこっちが優先だ。

椎名さんを……解放しないと。



「藍人くん、大丈夫!?あれは、一体」



「じゃあさ、椎名さん」



そこに、立っていることもできなくて座り込むあたし。



「何?……っ、どうしたの」



恐怖で椎名さんまで震え出す。



「救急車っ、呼ぶ……っ?ねえ、藍人くん」



「椎名さん……碧さんを、呼んで?」




そう笑えば、椎名さんが顔を青くする。

碧さん……これは、笑えないなぁ。



「な……んで」


「今は、……なんでもいいから……名雲碧を呼べ」



こっちも結構しんどいんだよ。


意識が、飛びそうだ。

体が、熱い。


少し経って、体がふわりと宙に浮く。