i -アイ-





『A : またお願いする』


あれが演技だったら、役者になった方がいい。


蓮や三國に、あたしといるのはしんどいだろって言ったことがある。


けれど、あたしが思う日が来るなんて。



……名雲碧は、違う意味で危険だ。




「藍人、くん?」



夏休みに入ったが、家でやることもないし、何かあってもすぐに動けるように学校の図書館で勉強をしてる。


そこに、何故か椎名さんもいる。

とはいえ、あたしみたいに一日中じゃなく1.2時間。

それ以外の時間はヴァイオリンに費やしているらしい。

家で勉強すればいいのに、あたしがいるからここに来てる。



「何?」



「いや、なんか、苦しそうな顔してたから、大丈夫かなって」



「ああ、気にしないで。」



こんなに冷たい対応をしても、そばに居るのは何故なんだろう。



「なんでこの子、こんな扱いしてるのにここにいるんだーって思ってる?」



ふふ、と笑う椎名さん。



「藍人くんは、本当に人を好きになったことないんだね。」



否めない。

恋愛してる暇なかったしな。


とはいえ、椎名さんだってそんな時間ないはずなのに。


「前にも言ったけど、一緒にいれる時間があるならそれでいいの。藍人くんが許してくれるなら、だけど」