「幹城、俺だ。」
起き上がった碧さんは、スマホを持っていない方の手であたしの頭を撫でる。
碧さんが何を考えているかは謎だが、碧さんにとって俺も同様だろう。
ベッドから出れば、
「どこへ行く」
「お手洗い」
伸びをしながらそう返事をしてトイレに行く。
洗面所で顔も洗って、制服に着替える。
貸してもらった服は洗濯カゴに入れた。
キッチンを借りて軽く朝ごはんを作る。
一応泊めてもらったは泊めてもらったから。
トーストとハムエッグとコールスローサラダ、コンソメスープ。
簡単なものだけ。
食材は結構ある。自分で料理するんだろうか。
「え、作ってくれたのかい」
やっと寝室から出てきた碧さん。
「勝手に使いました色々。すみません」
「ああ、いいんだよ。通いの家政婦にキッチンは一任してるから俺はほとんど触らないしね。今日は君がいるから来させてないんだけど」
そういうことか。
男の一人暮らしにしては、色々揃ってる。
料理好きならまだ分かるけど。
「簡単なものですけど、もし良かったら召し上がってください。……あ、毒は盛ってませんから安心してください」
ニッと笑えば
「逆に心配だな」
呆れたように笑われた。
「俺は1回家帰るんで、先に出ますね」

