i -アイ-





碧さんもベッドに上がってきて、隣に座る。



「碧さんが鬼龍組若頭になろうとした理由」


碧さんは何も答えない。


「寝ましょうか」


あたしは布団に入って碧さんに背を向ける。


すると、電気を消して碧さんが後ろからあたしを抱きしめるように布団に入った。


少し、碧さんが震えていることには目を瞑って。




____



スマホの着信音で目を覚ます。

あたしのスマホじゃないな。


周りの状況を把握する。

眠った時のまま。

後ろには碧さんの寝顔があって。


頭の上に碧さんのスマホを見つける。


画面には



『幹城』



この人は、隠すつもりがないんだろうか。

通話に出て耳に当てる。


『碧さん、朝早くにすみません』


「やあ、幹城」


『……』



あたしの声に押し黙る幹城。

あたしを後ろから抱きしめている人が、震える。


「こんな朝早くにどうしたの?碧さんなら、眠っているよ」


それも嘘だけど。

碧さんは起きて声を出さないように堪えながら笑ってる。


『お前、i か』


ここで声を荒らげないのが幹城だね。


「なあに、本名知ってるんだからその名で呼ばなくてもいいだろ?」


そんな他愛もないことを言えば、スマホは取り上げられてしまった。