i -アイ-






席を立って入口へ向かうと、トンッと背中に温もりを感じる。


あたしのお腹に腕が回ってる。


抱きしめられてる。



「椎名さん」


「ごめん、でも、少しだけ」



その時、嫌なことを思い浮かべる。


今日って、REIGNの皆溜まり場かな。

聞かなかったな。


あたしは椎名さんの腕を掴んで、あたしのお腹から手を外させる。



「今日は気をつけて帰って」


少し口角を上げてそう言えば、あたしを見つめる椎名さん。



あたしの手を強く握る。



「……好きです」



告白は何度もされた。

その一つ一つにしっかり謝った。


答えることが出来ないから。



「……ごめんなさい。その気持ちには答えられない」


何故そこまで久遠藍人を愛せるのか。



「じゃあ、友達としてでいいから、花火大会一緒に行ってくれない?」



「俺は椎名さんの気持ちには答えられないんだよ?一緒に行っても、椎名さんが辛いだけなんじゃないの?」



「藍人くんは、好きな人、いる?」



好きな人か。



「一緒にいられる時間が少しでもあるなら、それでいい」



その日は、あたしは椎名さんにハッキリ言うことなく、過ぎた。


その後は夏休みに入るまで、椎名さんがおすすめの本を貸してくれたり、CDを貸してくれたり。