「そ。お前は見た目チャラそうなのに、真面目だよな」
普通、男なら、椎名さんにああやって迫られたら嬉しいんだろうな。
あたしにとったら、危うくて。
放課後、第二音楽室に向かえば、ヴァイオリンの音がする。
中に入ると、椎名さんだけが居た。
俺に気付いて手を止める。
「藍人くん」
ふわっと笑う。
嬉しそうに。
榛人はこういうことが日常茶判事だったんだろうか。
「ごめんね、無理言って」
眉を八の字にして笑う椎名さん。
「なぜここに?」
あたしが聞けば、
「あたし、実はヴァイオリンやってて。お茶がダメなら、お礼に演奏聞いてもらえたらなって」
きっと、この人の演奏会は高いんだろうな。
「いいんですか?」
「もちろん。リクエストとか、ある?」
「お任せします」
特等席で聴いた。
耳が心地よくて、思わず目を瞑る。
耳を酷使してたから、ありがたいな。
気付いたら1時間ほど経ってた。
「ふぅ、どうだった?」
「……とても、素敵でした」
ふっ、と笑えば、椎名さんは泣きそうな顔で笑った。
「良かった」
そこまで、久遠藍人が好きなんだろうか。
「俺、帰りますね。今日はありがとうございました」

