i -アイ-





「俺の事、知ってるの?」



「し、知ってる、けどお前を敵に回すほど俺は馬鹿じゃねえから、これで手を引く」



「そう。」


後ずさって逃げようとするそいつの首を掴む。


「女の子に怖い思いさせといて、逃げられると思ってんだ?」


男の震えが伝わってくる。


三度ほど、鳩尾を殴る。

お前はすぐには意識飛ばさせねえよ?



「馬鹿だねえ」



抵抗しない男の顔面を殴る。


ドサッとそいつを離して、女の子の方を見れば、あたしを見て震えていた。



そりゃそうか。


近づけば怯えた目をあたしに向ける。

学校じゃクラスメイト以外見たことないのか。



ブレザーを脱いでその子にかけてあげる。


「服、直しな?」


ハッとして顔を赤くした女の子は、後ろを向いて乱れた服を直した。


あたしはカバンを拾う。



「家この辺なの?」


出来るだけ柔らかい口調で話す。

黙って頷く女の子。


「そっか。今日は怖いだろうから、送っていくよ」


えっ、とあたしの顔を見上げる女の子。


「……嫌?」


そう聞けば、パクパクと口を動かして首を振った。


「じゃあ、行こう」



家に着くまで出来るだけ会話をした。

今は嫌なことを考えさせるのは良くないだろうから。