色んな可能性がある。


相手がいない理由。

頭に浮かぶ可能性に、戸惑っていれば、クスクス楽しそうに笑う碧さん。



「コーヒー、飲み終わったね。お腹空いただろ?おすすめの場所があってね」



話半ばに立ち上がって歩いていってしまう碧さん。


あたしが追いつく頃には支払いも終わっていて。



「碧さん、お金」



「ああ、今日は俺が誘ったからね。君は出さなくていいよ」



年上だから、社会人だから、という理由じゃなく、誘ったから。


まるで対等に扱われているような言葉。



「ん?どうした?」


信号機待ちで、碧さんの顔を見上げていれば、横目であたしを見てクスッと笑う碧さん。



「碧さんは……もしかして、男性が恋愛対象なんですか?」



これが、あたしの思い浮かべる可能性。


もちろんマイノリティだからと言って、今の世の中恋人が作れないわけじゃない。


だから、半信半疑だけど。


「ああ」


前を向いたままそう答えた碧さん。


もしかして、


そんな想像が増えていく。



「藍人、青だよ」



その声に前を向いて着いていく。



「俺はゲイで、それに職業上相手を作るのは難しくてね。」


八澄会鬼龍組若頭ともなれば、配偶者は生半可な人間じゃ生きていけない。