「あたしは寂しくても連絡しないよ。」
利人さんから離れ、ふっと微笑む。
「ありがとう、利人さん。あたしはもう大丈夫だからね。行ってきます」
「……おう。ここまで来たら、もう好きにやってこい」
「らじゃー」
扉を開けて、1歩を踏み出す。
ここから、ここからだ。
「おはよう、藍さん」
「おはよう、綾ちゃん!」
フレームのないメガネをしたインテリ系のイケメンが、目尻に皺を作って笑う。
「ははっ、私のことをそんな風に呼ぶのは藍さんだけですよ」
「ごめんね、わざわざ送って貰うことになっちゃって」
「良いんですよ。私が藍さんの顔が見れるなら是非と名乗り出たんですから」
「わー、何それ。そんなこと言っても何も出ないよ?」
「出ましたよ?利人の拳が」
あ、殴られたんだ、綾ちゃん。
後部座席のドアを綾ちゃんが開けてくれて、車に乗る。
「それにしても、学生時代の榛人さんと瓜二つですね?」
「やっぱり、綾ちゃんもそう思う?」
「ええ。毎日のように女性に囲まれていた榛人さんを思い出します」
やっぱりそういう場面が思い出されるのね。
「藍さんはダメですよ?例え女性でも近寄りすぎるのは私が許せません」

