それでも、西尾を確実に潰すことをしなかったのは、きっと西尾和之の腕はいい物なんだろう。
親としてはマイナスだが。
違う視点から這い上がることができる人材だと榊は判断した。
それだけでも喜ぶべきだ。
その事をあの馬鹿息子は気づいていないんだろうが。
「やっぱり、榊亮が久遠藍人を庇ったってことで広まってるのかな」
「いや?1スタッフを守った、ぐらいじゃねえの」
どうなんだろうな。
あたしの教室に着き、暁が、じゃ、と歩いていく。
「暁」
呼び止めれば、あたしの呼び捨てにザワつく周り。
「今日、昼屋上に」
「ああ。あいつらに伝えとく」
「よろしく」
教室に入り、滝谷に挨拶をする。
「はよ」
「俺はお前が怖い」
本当にこいつが喋ると和むな。
「何が」
「普通、榊先輩のこと呼び捨てするか?」
「仲良くなれば滝谷でも出来るよ」
「いや出来ない」
何言ってんだこいつという顔をする滝谷。
「しかも榊亮さんにも知られてんだろ?お前」
……知られてる?
「息子の友達だと知っていたから庇ったって言ってたらしいぞ。」
そういうことね。

