顔を上げて、コーヒーを飲み干す。
「暁、来てくれてありがとう。」
立ち上がり、ゴミ箱に缶を投げ入れる。
「まだあなたに話せないことは沢山ある。けど、今の俺の言葉で察してね。」
微笑んで見せれば、暁はあたしの腕を引く。
そうして、抱きしめられる。
「分かった」
亮さんは息子にも何も話してないんだな。
たった1人の家族を危険に晒したいわけが無い。
「暁のこと、早く思い出すからね」
なぜ忘れたんだろう。
暁はなぜそんな辛そうな顔をするんだろう。
「藍」
暁が離れ、あたしの頬を撫でる。
そうして気付いた。
自分が泣いていることを。
そう言えば、榛人の葬式の時も亮さんの前でやっと泣いたんだったな。
今あたしは、寂しいのか。
「ごめん。なんか、出てきたな」
自分の服で拭う。
暁の前で泣いてしまうのは、何故だろう。
「藍、お前は昔から泣き虫だな」
「え……?」
そんな記憶あたしにはない。
「三國にくっついて回って、危ないこともするから怪我した時に泣くんだよ。それでまるで三國が悪いかのように俺に泣きつくんだ」
「悪ガキじゃん」

