頭を撫でてくれている手が止まる。
「俺ここから帰れます。近いんで」
顔をあげてニッと笑えば、ふっと春日井さんは微笑んで、そう。と言った。
車を降りて、車を見送れば、あたしは家の方向と逆方向に歩く。
別に今日は尾行がいるわけでもないけど、少し頭を冷やしてから帰った方が良さそうだったから。
三國から電話が来てそれに出る。
「どうした」
『何も。お前、家着いたか』
「あー家の近くまで送って貰って、一人で散歩してた」
『……どこ』
場所をいえば、数分でバイクの音が聞こえた。
溜まり場からそんなに遠い場所じゃないから、バイクじゃなくてもいいのに。
甘えたくないし、三國のあたしへの気持ちは今はどんな形でも答えられない。
来て欲しくない。
目の前にバイクが止まり、男が降りてきてメットを取る。
ああ、三國じゃない。
「何飲んでんの」
あたしの手に持つ缶を見て、そう呟くのは
「コーヒー」
「そ。俺も買ってくる」
暁さん。
……1番ここに来たくないんじゃないの?
ここは、榛人が死んだT字路。
近くの自販機でコーヒーを買って、歩み寄ってくる暁さん。
「隣、いいか」
「……いいよ」

