「まあ、一理あるかもしれないけれど。君みたいに肝が座ってる人はなかなか居ないでしょう。」



まあ、それもそうか。



「春日井さん、俺の親が生きてたら歳近いんですよね」


ハンドルを握る片手が微かに反応する。


「だから、勝手に、春日井さんが独り身なのもったいないなぁって思うんですよね。うちの親は自由奔放で春日井さんみたいにしっかり者って感じじゃなかったので、うちの親より良い親になるだろうなって」



ああ、また弱い部分が出てる。


こんなこと話したって意味ないのに。



いつの間にか車が止まり、頭を撫でられる。



「君は確か、ご両親2人ともいらっしゃらないんだったね」


真顔であたしを見る春日井さん。

でもどこか優しくて。


「寂しい時は寂しいと言っていいと思うよ。どれだけ肝が座ってても、色んな世界を見ていても。俺には、普通の子供に見える時の方が多い。」


薄々、あたしが普通じゃないことは気づいてる。


けれど、そんなふうに言ってくれる春日井さんの言葉が優しくて。



……何のために甘えを捨てたか。


大人に触れると、甘えが出る。


これまでどれだけ利人さんに甘えていたか、痛感する。



「……ありがとう、春日井さん」



俯いてそう呟く。