i -アイ-





「あ、それとも、今回の出来事で俺クビになっちゃったりします?」



「それは心配ない。榊様がうちの会社のトップに話をしてくださったらしい」



抜け目のない人だな。



「良かった……じゃあ、心配して?」


「何ともないのなら問題ない。お疲れ」



この人も不器用だな。



「春日井さん!」



「なんだ」



「もし良かったら、今回のお詫びと言ってはなんですが、食事行きません?」



「は?」



「もう遅いですし、ラーメン屋ぐらいしか開いてないかもしれませんけど。」



「いや、いい」


断ることも目に見えてた。



「決まりですから。ね?」



春日井さんの腕を引っ張り、歩く。



「久遠、俺は行かない」


仕事中より、ラフな言葉遣いをする春日井さん。


「久遠、君力強いな」


必死に腕を振りほどこうとするけど、春日井さんは至って普通の人で、喧嘩をし慣れているあたしの手を振りほどくことは不可能。


「春日井さんはどういう系のラーメン好きです?」



「……結構君は強引なタイプなんだな。」



冷たくて潔癖な春日井さんだけど、認めた人には優しい。



「春日井さんが本気で嫌なら行きませんよ?」



足を止めて真顔でいえば、目を泳がせる春日井さん。