i -アイ-





「ですが、亮さんの言う通り、貴方は亮さんに助けられた。つまり、俺は貴方を消すことを亮さんに許されていません。ですので、今回は目を瞑ります。……今後このようなことがあった場合は、覚悟していてください」



知らない。

あんたのちっぽけなプライドなど。

消すとしても、この世界からだ。


命を奪うわけじゃない。

それがあたしには甘く思えてしまうほど、命があることの大きさをあんたは知らないだろ。


今、あんたがある環境があんたにとって幸せではなくとも、あんたが生きていることが幸せであることを思い知った方がいい。



「藍人」



……亮さんと話せたことは大きいけど、REIGNを狙う人間を探すことは出来なかった。

その焦りが多かれ少なかれ、あたしの心の中にはある。


計画が乱れた。

それも、こんな小さな歪で。


それに対して少しでも動揺したあたしは、まだ小さい。



『信じろ』



ふっと笑いが零れた。



「今後、俺に関わらないでくださいね」


西尾は青ざめて、失礼しますと言って部屋を出ていった。


あの純粋バカの言葉がここで役立つとはね。



「そろそろ戻るか」


亮さんがソファから立ち上がる。


「うん。ありがとうね亮さん」


「いいや。こんな時でもなきゃ、お前と会うのは難しいからな」