i -アイ-





何を考えて、西尾佑樹だけをここに残したのかは分からない。

けど、まああたしの考えも言っておいた方がいいだろうし。



「別に、お前のためにこいつをここに残したんじゃない」



……あら?


その言葉に西尾佑樹が顔を上げる。


「俺もなあ、いつもヘラヘラして女を侍らせてるようなやつが、努力もしないで頂点に君臨してるのが鼻につくタイプの人間でさ」


西尾佑樹の目に色が戻る。

……でも残念ながら、お前と一緒なわけないでしょ。



「分かるよ。そういう奴をとことん潰したくなる気持ちは。それに、負けたくない相手とぶつかることも悪いことじゃない」



その言葉にニイッと口角を上げる西尾佑樹。



「でもな」


冷たく話すかと思いきや、声の温度は変わらない。



「相手を考えろ」


西尾佑樹が眉間に皺を寄せる。


「俺は藍人を助けたわけじゃない。お前を助けたんだよ。」


ニッと笑う亮さん。

優しそうに見えるけれど、言葉の意味が分からない西尾にとっては気味の悪いものでしかない。


「お前、藍人のこと殴ってたら、今頃ここに居ないぞ」


冷たく言い放つ亮さん。

西尾の表情が固まる。


「……は?」


「俺を殴って、今回はお前の親が困るかもな。けど、もし万が一藍人を殴っていたら、親もお前も路頭に迷ってただろうな」