i -アイ-





終わった。

西尾和之はそう思ったに違いない。


西尾和之の言葉を渡って、もう会うことは無いと言われたも同然だった。



「……失礼致します」


その弱々しい父親の声に、震えが止まらなくなる西尾。


バタン、と西尾和之が出ていった扉の音を聞き、亮さんはソファに座る。



「君、名前は」


西尾和之への声よりも温度のある声で亮さんが話しかける。

息子は所詮子供だ。

話しやすい環境を作らなければ、話すこともままならないだろう。



「西尾、佑樹です」



「いくつ?学校は」



「17です……黎鳳学園高等部2年です」



まあそう考えれば、暁さんと同い年なのか。



「そうか、暁と同い年か。……で?」


その、……で?はあたしに向けられたもの。


「元々西尾佑樹は秀才枠をいじめてる。そんな中で球技大会で俺と対峙して、西尾佑樹のクラスに俺のクラスが勝った。……亮さんに話すまでもない小さなことだよ。秀才枠の俺に負けた。それが西尾佑樹にとっては屈辱的なことだったんだよ」


そう説明すれば、興味なさげに西尾佑樹に目線を移動する。


「亮さんに迷惑をかけたのは謝る。俺も色々忙しくてね。この人に構っている余裕もなかったから、そこは反省してるよ」