i -アイ-





「お立ち下さい」


複雑そうな表情を浮かべ、亮さんの言葉に立ち上がる西尾の父親、西尾和之。


「先程のことは特に怪我もありませんし、気にせずに」


「いいえ、こんな事をこちらが申し上げるのは恐れ多いのですが、私共の医院で診させて頂いてもよろしいでしょうか。もちろん、代金の方はこちらで。」



今後が掛かってる。

西尾和之の目は本気だ。


「西尾さん」


けれど変わらず亮さんの声は冷たい。


「私のことはどうか気にせずに。それよりも、黒木さんへのフォローをお願いしますね?」


苦い顔をする西尾和之。

とんでもない事を息子はしたなぁ。

こうならない為にも、ちゃんと育てなきゃ。


「ええ。本日もお声がけさせて頂き、後日また伺わせて頂くこととなりました。」


「そうですか。」



その後も長々とお詫びの言葉を連ねる西尾和之。



「お気持ちは分かりました。息子さんとお話させていただいても宜しいでしょうか」


ピクッと頭を下げていた西尾和之が、反応し青ざめる。


そうだよね。息子、何しでかすか分からないもんね。



「宜しいですね?」


冷たく息苦しさを感じるほどの圧力に、ぐうの音も出ない西尾和之は、


「承知致しました。では、私はこれで。また後日……」


「お会い出来るといいですね」