i -アイ-





「分かりました。お呼び頂けますか」


「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」



そう言って下がる春日井さんと社員さん。



「藍人は居させてください。私がここを出る時に一緒に出ますので」



何をする気なんだい、亮さん。



「かしこまりました」



お前一体何もんだ、って目をして下がる春日井さん。

あたしは苦笑いで返す。


それから10分ほどでインターホンが鳴った。


西尾と父親が入ってきて、あたしの存在にまず目を見開いた。

あたしは目を伏せ、干渉しない。



「榊さん。この度は私の息子が大変遺憾な行為を働いてしまったこと、誠に申し訳ございません」


強い声でそう言って、土下座をした父親。

そこで改めて実感する。


ああ、榊はトップなんだな、と。

味方にすれば最強。敵に回した時にはもう地獄。もはや、この土下座は命乞いだ。


西尾もこんな事になるとは思わなかっただろう。


父親の姿を見て、ズボンを握りしめ俯く西尾。


「本当に申し訳ございませんでした」


押し出すように謝った西尾。

震えてる。


ギシッとソファから立ち上がった亮さん。

西尾がビクッと肩を揺らす。



「おふたりをここにお迎えしたのは、謝罪を求めてのことではありません。」

そろそろ夏だよね?

凍りつくほどの冷たい声に、あたしまで亮さんの顔を見てしまう。