「久遠」



「はい」



インカムからあたしを呼ぶ声がして、今回の会場の責任者である上司の元へ行く。



「今日君には中央の5、6番テーブル付近を担当してもらいますが、そこが1番人が集まる。分かっていますね?」


あたしは入学すると同時に、この高級ホテルの会場スタッフのアルバイトをしている。


これも、情報収集のため。


『黒木カンパニー 代表取締役社長 黒木尚也誕生パーティー』



この2ヶ月ほどで、働きぶりを買われ、今回はメインであるポジションを担当することになった。

俺以外は皆社員だ。



「承知しております。」


軽く頷いて、ニコッと微笑む。

春日井さんは36歳、独身。

イケメンで仕事も出来る。


だけど、潔癖で冷たくて厳しい。



その性格の難から独身らしい。まあ春日井さんは独身貴族とやらなんだろう。

パートナーとか求めてなさそう。


「君の仕事ぶりは認めています。焦らず落ち着いて、いつも通りで十分ですのでよろしく」


今回、この会場のメンバーとしてあたしを推薦してくれたのも春日井さんだ。


そんな褒め言葉や激励の言葉も淡々としている。


「ええ。春日井さんのご期待に添えますよう、最善を尽くさせて頂きます」


また口角を上げて目を細める。


時間が近づき持ち場に着く。