榛人もまりあちゃんもいつもはとても優しい。
けれど、ケジメをつける時はとてつもなく厳しい。
榛人は言葉に温度が無くなる人だし、まりあちゃんは容赦なく現実を叩きつける人。
本当に怖い親だよ。
まりあちゃん、あたしに目を覚ませって言いたいんだよね。
「分かった。行こう」
あたしの言葉に、狼狽えたのは利人さんの方。
これでも、榛人とまりあちゃんの一人娘だからね。
病室に入った時、ショックを受けた。
変わり果てたまりあちゃんの姿。
痩せて、たくさんの管に繋がれた体。
涙が溢れた。
「何を泣いているの?藍。」
凛とした声で話しかけるまりあちゃん。
本当に強いなぁ、まりあちゃんは。
「藍、少しお別れが早くなっただけよ?」
座りなさい?なんて、いつも通りの言葉と声色。
あたしと別れるのが悲しくないの?
そんなことを言いそうになる。
まりあちゃんが思ってないわけが無い。
分かってる、まりあちゃんはあたしを愛してくれている。
強く、なって欲しいんだよね?
もう、泣かないから。
涙を拭って、うん。そう頷いてまりあちゃんの傍の椅子に座った。

