人通りの少ない路地の自販機のそばにバイクを置き、自販機で温かいコーヒーを買う。



2月もあと数日で終わる。

まだまだ外気は突き刺すように冷たい。



両手で缶を包み、暖を取る。



やっと熱いコーヒーを飲み干したところで、人より優れた聴覚が反応する。



「行くかぁ」


自販機の隣にあるゴミ箱に缶を捨て、メットをかぶりバイクに跨る。



今は22:30。


早めに終わらせて帰らないと、利人さんに怒られるだろうなぁ。



たどり着いた空き倉庫の扉は全開。


バイクでそのまま中に入る。


月明かりが若干差し込む倉庫は物が少なく、バイクのエンジン音が響く。



エンジンを止め、後ろを向いた状態でメットを取り、パーカーのフードを被る。



「……お前、誰」



倉庫に居たのは、二人の男。


1人は立っていて、1人はうつ伏せで転がっている。


声をかけてきたのは立っている方。



「どうも、こんばんは。」



立っている方はスーツに黒のワイシャツ。ワイシャツの首元は2、3個ボタンが開いていて、銀のネックレスが覗く。


若干長めのセンターパート。緩くパーマのかかった髪型のその人は、冷静にこちらを眺めている。



「その子、REIGNの子かぁ」



うつ伏せで転がっている男は金髪で、所々血が固まり、黒ずんでいる。