素直になりたい。

「直禾ちゃん、映画どうだった?」

「あ、うん。すっごく面白かった。特に最後の犯人を追い詰める女性刑事のアクションとか、カッコいいし、スリル満点ですっごく良かった!」

「だよね!直禾ちゃんなら、分かってくれると思ったんだぁ。あれ選んで良かった」

「天羽くん、ありがとう」

「いえいえ」


なんて笑っているけど、

映画を見たのはラスト15分くらいのことで、

絶対感想を聞かれるだろうな、と思ったから用意した返答だった。

私って、

ほんと最低だな。

王子様が隣にいて、

私に微笑んでくれるのに、

それなのに、

別のことばっかり考えて。

自分の足のこととか、

日下さんのこととか、

櫻庭のこととか。

全然、天羽くんのこと、見てなかった。

贅沢な一時のはずだったのに、

もったいないことしちゃったな。


「直禾ちゃん」

「あ、何?」


天羽くんが立ち止まり、私も足を止めた。

出てすぐ目の前にある噴水を見つめる。

夜になると、噴水がライトアップするから、すごく綺麗だ。

ピンク、黄色、オレンジ、青、緑、紫...。

カラフルな色彩に染められながら水が打ち上がる。

それはまるで、

色々な感情が生まれ、

制御できなくなって沸き上がる

心の泉の権化のよう。

そう...

今の私の心と

似ている。