「ハムが嫌ならなんて呼べばいいんだよ?」

「は?」


私は急ブレーキをかけた。

廊下の窓から春風が吹いてくる。

春風と共に運ばれてくる香りがある。

この香りは忘れることも出来ない。

不覚にもキュンとしてしまった甘くて切ないラベンダーの香り...。

コツコツと足音が近づく。


「おーい、ハム」

「うざい。話しかけないで」


私は教室のドアを勢い良く開けた。

迷いもなく窓際1番後ろの席に突進していった。

ぼろぼろになったリュックを脇にかけ、机に突っ伏す。

ここでもまた爽やかな風が髪を撫でる。

髪ばっかりじゃなくて、

私の心もさらっていってよ。

ページをめくるみたいに、

自然に。