素直になりたい。

「ま、俺は必勝祈願だな。勝てないやつは家に入れないって言われてるから」

「どういうこと?」


櫻庭がその漆黒の瞳を私に向けてくる。

なんだろう...この感じ...。

いっつもはキラキラしてたはずなのに、

眩しくて見られなかったのに、

今はその闇の中心に引き込まれる。

まるで引力が作用しているかのように...。


「鷲尾も知ってると思うけど、俺の父親さ、櫻庭ホールディングの社長じゃん。

すっごく厳しくて、なんてか、その...基準みたいなのがあって、親父の中に。

それを満たさないと継がせないって言われてさ。

別に継ぐつもりもなかったんだけど、ある時ふと言われたわけ。

お前じゃなくて匠望(たくみ)に会社を任せる、って」

「匠望くんって、もしかして...生徒会書記の?」

「そう。昔から匠望の方が何でも出来てさ。俺なんて正直期待されても応えられないことばっかりで。

いつしか期待もされなくなってこのザマだ。

で、窮地に追い詰められた俺は思ったんだ。人って誰かに必要とされてこそ人の道を歩けるんだって。

俺には会社が失くなったら何もなくなるんだなって。しょーもないやつだって分かった。

だからこそ、せめて弓道くらい良い成績残して親父のこと、少しは見返したいって思ったんだ」