素直になりたい。

「あのさ、家まで送ってくから、シャワー貸してもらえる?」

「な、何急に。送ってもらわなくていいし、それに家にもあげないから!」


と、言ってはみたものの......

良心が揺さぶられる。

この冷えきった男を置いていって、お前の良心は少しも痛まないのか?

そう、もう1人の私が聞いてくるんだ。

うぅ......。


「明日の試合にはなんとしても出たいんだ。頼む」


うぅ...


うぅ...


うぅ...


仕方ない。

本当に本当に本当に仕方ないけど、

何かあったら祐希さんも、

なんなら店長もいるし、

大丈夫だ。

とりあえず、連れていこう。


「分かった。分かったから、行くよ。こっち...」


歩き出そうとするとよろけた。

もぉ、何やってんの、私。

転んだくらいでくじけるな。

しっかりしろ。


「背中、貸す」

「えっ?」

「さっき体温もらったから大分元気になった。だから、今度は俺が貸す番。つべこべ言わず乗って」

「...うざっ」


私はプライドも今までの過去も捨てて、その大きな背中に飛び乗った。

そして、思い出した。

昔もこんなことがあったなぁと。


「あん時より軽いじゃん」

「うるさい。早く行って」

「はいはい」


こうしてようやく歩き出したのだが、

櫻庭はずっと7年前の惨劇を笑っていたのだった。