そして、残るは同じ電車の私達。


「荷物持つ」

「では、遠慮なく、よろしくお願いします」


私はぺこっと頭を下げた。

すると、またデコピンが飛んできた。


「またやった!あのさ、一応ね、私、怪我人だよ?櫻庭に優しさっていうのはないの?」

「昨日助けに行ったのは間違いなく優しさだと思うけど」


くぅ、ムカつく。

何この余裕の笑み。

すっごくイライラしてくるんだけど。

私がぷいっと顔を背けると、櫻庭が立ち止まっていった。


「パン久しぶりに食べたいんだけど、行ってもいい?」

「そんなの私の許可取る必要なくない?」

「でも、俺嫌われてる感じだからさ」

「あ...」


そうだ。

なんか色々あって色々忘れてたけど、

私と櫻庭って、

ケンカしてたんだ。

えっと...

どっちが謝るべきなんだろう?

私が疑ってかかっちゃったから、

やっぱり私が謝るべきだよね?

私は櫻庭の方に顔を向けた。

そして、大きく息を吸って......


『ごめんなさい!』