素直になりたい。

「今日こそ、仲直りしなよ」


リフトに乗り、中腹まで来たくらいで千咲ちゃんが呟いた。

私はちょっとばかり怖いのを我慢して銀世界に見惚れるふりをしていたから、突然の言葉に驚いて飛び降りそうになってしまった。


「ワタシには見える気がする。2人の赤い糸」

「えっ?ちょ、ちょっと待って。あ、赤い糸って、そそ、そんな!」

「なんだかんだで仲良しだし、なんか似てるし。見てて微笑ましい。こういうのが運命の2人なのかなって、なんとなく思っちゃうんだ」

「う、運命の2人?!な、なな、なんかドラマのタイトルみたいぃ~」


声、裏返ってるし、

顔がやかんくらい熱いし、

私、分かりやすすぎ...。

しっかりしろ、直禾っ!

拳を太ももに叩きつけると、千咲ちゃんがくすくすと笑った。


「何それ?気合いを入れる儀式?痛くないの?」

「い、痛くないよっ!こんなので痛がってたら転べない」

「そうだね。わざと転んで助けてもらったら?」

「いやいやいや、やらないよ!そんなあざといこと、私が出来るわけない」

「じゃあ、それなりに頑張って」


もぉ、千咲ちゃんの意地悪。

そんなこと言われたら、滑走前からドキドキして昇天しそうだよ。

山の神様、お願いします。

どうか、安心安全第一で滑走させてください。

私は最後にそう祈って、リフトを降りる体勢に入った。