素直になりたい。

割れた心から生ぬるくて甘い蜜のようなものが漏れだした。

しかし、それは次第に琥珀色から漆黒に変わっていく。

希望から絶望へと変化を遂げた時、

またその現実に対峙した時、

人はどんな言葉を紡ぐのだろう。

私はそんなことを頭の中で考え、口を開いた。


「白雪姫、あなたは強い。あなたのその心の強さこそ、国を変える大きな力となる。私の魔法なんて無意味なものだったの。魔法があっても、人の奥底にある心を変えることは出来ないのだから...」

「お母様...」


勝手にセリフを変えてしまった。


――分かったわ。これからは手を取り合い、この国の皆を幸せにしましょう。


という、それだけだったのに...。

突然、このストーリーに疑問を感じてしまった。

ガーネットは本当は白雪姫となんて力を合わせたくなかったに違いない。

だって、ガーネットが求めていた幸せはもうここにはないのだから。

サファイアは...いないのだから。


「私は故郷へ返るわ。白雪姫、エメラルド王子、この国を...あの人が愛したこの国を...よろしくお願いします」


私はそう言って颯爽と舞台上から去った。