素直になりたい。

私達のクラスの最終練習は無事に終わった。

この学園の文化祭は2日間行われるのだけれど、私達の本番は11時と14時。

大道具、小道具の人たちはもう仕事を終えているから本番ギリギリまで遊ぶらしいけど、演技班は本番まで常に緊張状態。

冷凍室に入ったかのように固まり、ただひたすらセリフを繰り返し読んで頭に叩き込んでいると、肩を叩かれた。


「よし、引っかかった」


綺麗な人差し指が私の頬に食い込む。


「何してるの?私で遊ばないで」

「緊張してるなら、ほぐしてやるのが王子の役目だ」

「いや、あなたは王子じゃなくて国王でしょ?」

「今、新大って言った?」

「言ってない」


こんな時に呑気に話しかけてくるなんて。

櫻庭は緊張していないのだろうか?


「櫻庭は緊張してないの?」

「鷲尾にはどう見える?」

「え~?う~ん...してないと見せかけてしてる」


と言うと、ピシッとおでこに攻撃を食らった。


「分かってんじゃん。さすが、妻役」

「ま、でも、どうせ役だから。本当の恋人だったら、もっと良く分かってたと思うけど。
櫻庭も残念だったねぇ、私が相手役で。本当はシンデレラの王子役とかが良かったりして?」

「は?別に俺そんなこと思ってないし」


なんて言ってても、どうせ思ってるんだ。

日下さんと一緒にやりたかったって。

日下さんと同じクラスの生田くんと櫻庭をトレードすれば、完璧な構図だったのになぁ。

先生たち、きっと一生恨まれるよ。