素直になりたい。

「鷲尾先輩」


ん?

こ、この声は...。

私は勢い良く振り返った。


「匠望くん...」


そういえば、先月の生徒会総会で会長になったんだっけ?

今やもう会長様だ。

私もすごい人と知り合いになったなぁ。

なんて、感心している場合でもないんだけど。


「やっぱり1人で練習していたんですね」

「えっ?やっぱりって何?」


この人は突然何を言い出したの?


「生徒会は全ての情報を持っています。鷲尾先輩が兄の相手役ということももちろん知っています」

「うん。だから?」


匠望くんが私に1歩近付く。

そして、そのクールな表情のまま、告げた。


「兄は毎晩公園で練習しています。鷲尾先輩もご存知ですよね?さくらが丘小近くのめばえ公園」

「あ、うん」

「兄はダンスが苦手なんです。だから、何回も何回も練習して、自分が納得するまでやろうとしているんだと思います」


さすが、弟。

櫻庭のこと、良く知っている。


「僕も今から帰るので一緒に来て頂けませんか?別に鷲尾先輩のことを心配しているわけではなく、ただ弟として兄の醜態を晒すのが嫌なだけで...」


始まった。

またそんな可愛くないこと言っちゃって。

本当はすごく

櫻庭のことも

私のことも

心配してるくせに。


それが分かるから、

私は断れないんだ。


「分かった。行くよ。私もこのまま引き下がるわけには行かないから」