素直になりたい。

が、しかし、

突如満腹中枢に追い付かれた。

私の手が止まった。


「もしや...」

「ギブです」

「いや、まだステーキ半分とドリアも3分の1くらいあるけど」

「お金は私が出すから、櫻庭食べちゃって。いけるでしょ?」


私の言葉に櫻庭はふっと笑った。


「何?」

「いや、間接キスになるけど、いいのかなぁと思って」

「か、かか、かかかっ、間接...き、きっ!」

「言わなくていい。残すのも勿体ないから食べる。そのために俺はあれしか頼まなかったんだし。んじゃ、遠慮なく頂きまーす」


な、な、なっ...!

恥ずかしくて目を反らした。

間接......キス......

なんちゅうことしてんの、私。

エアコンがガンガン利いているというのに、汗が出てくる。

手汗はスカートでなんとかするけど、額の汗はどうにもなんない。

おもむろにハンカチを取り出して拭いたらバレるし。

どうしよう...。


「顔真っ赤だけど」

「う、うるさい。櫻庭だって朝昨日のこと思い出して動揺してたくせに。よくそんな涼しい顔していられるね。自分だって余裕ないくせに私にばっかり言わないで」


私はそれだけ言うと水をガブガブ飲んで、机に突っ伏した。


「変なやつ」


変なやつだけど、いい。

櫻庭の顔見て真っ赤になるよりマシ。

当分はこの体勢でいく。