素直になりたい。

「そ、そそ、そんなことしないでしょ。気持ちのない相手にむやみやたらにハグしたりしない。そう。人間って、そういう生き物。うん、そう」

「何1人で納得してんの?」

「納得するしかないじゃん。私だって良く分かんないんだから。それより、水族館にでも行こう。せっかく来たんだし。それともどっか行く?どっかって言ってもどこ行けばいいか分からないけど」

「分かんないのに言うなよ」


そう言うと、櫻庭は立ち上がった。

やっと重い腰を上げて動き出すらしい。

私はそれに着いていくだけだ。

一応、カノジョ役なので。


「じゃあ、チケット買ってくる。直禾はここで待ってて」

「あ、うん」


今日は監視人がいないのに、それでも名前で呼ぶんだ。

さすがにテレる...。

ランタンみたいに、頬にぽっと淡い熱が宿る。

名前呼びほど、憧れだったものはないから。

何度も私の名前を呼んでくれて、

何度も私の手を握ってくれて、

夕日に照らされながら砂浜の上を走ったりして、

そして...

ふと立ち止まった時に、

私の頬に手が伸びて、

私は目をゆっくりと閉じて

唇に柔らかな感覚が落ちるのを待つ。

体が徐々に熱くなって、

ふわっとした気分になって、

そして......。