素直になりたい。

「あのぉ、匠望くん」

「僕のことは名前で呼ぶんですね」

「ま、まぁ。色々あってお兄さんの方は苗字呼びなんだけど。あはは」


ぎこちなく笑う私の隣で、匠望くんは石に向かって皿を投げつけた。


――パリンっ!


「割れた...」

「割るために投げたんですから、当然ですよ。ちなみにこれは魔去ル石といいます。
漢字の“勝る”と“魔が去る”の“魔去る”をかけて、今までの不運に勝つということで、この石に向かって皿を投げて割れると不運を絶ちきることが出来ると言われています」

「へぇ、そうなんだ...。匠望くんすごいね。知ってたんだ」


と、素直に誉めてあげたのだが、彼はそっぽを向いたまま、もぞもぞと話し出した。


「人生全てが勉強の範疇ですので...」

「ほほぅ、さすがだね。名言だ」

「そんなことはどうでも良いので、鷲尾先輩も早く割って下さい」

「割って下さいって。ふふっ」


弟もなかなか面白いなぁなんて思いつつ、私もお金を納め、皿を購入した。


「これって叫んでも良いのかな?」

「ご勝手にどうぞ」

「じゃあ。遠慮なく」


私は皿に力を込めて、

頑丈な石に向かって

投げつけた。