素直になりたい。

「あ。新大と匠望が来た。お~い!」


そうだ。

忘れてたけど、匠望っていう弟も一緒だったんだ。

どうせ私のことを査定しに来たのだろう。

櫻庭家にふさわしい嫁なのかどうなのか見極めて、堅物らしいお父様に報告するんだ、きっと。

あぁ、今度は寒気がしてきた。

体温の上下が激しくて、今にでも天に昇っていきそうなくらい。


「はぁ...」

「直禾、何ため息ついてんの?」


な、な、なな、直禾?!

びっくりしたけど、ふと我に返る。

そ、そうだ...。

私、名前で呼ばれるんだった。

私は断固拒否して名前呼びは免れたけれど、私は名前呼びに慣れないと。

私はやる気スイッチをオンにして、笑顔で振り返った。