素直になりたい。

せっかくの8月1日の映画デーなのに、爆睡してしまいながらも迎えた翌日。

私達は午前8時に東京駅に集合させられた。


「おはようございます」

「あ、鷲尾さん。おはようございます」

「初めまして。2日間、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」


緊張して手が小刻みに震える。

成績優秀の生徒会カップルと対峙してしまうと何をしたら良いか分からない。

とりあえず私と櫻庭の偽装カップルの模範となってくれる人たちだから、その一挙手一投足を見逃さないようにしないと。


「大変だと思うけど、頑張って」

「あっ、はい」


会長様から励ましの言葉をもらってもプレッシャーになるだけ。

お願いだからそっとしておいてください。

なんて、内心思ってしまう。


「大丈夫?額から汗が...」

「い、いえ、大丈夫です。ただ暑いだけですから。えー、今何度なんでしょうねー。あははは...」


笑えていないし、笑われもしない。

お笑い芸人だったら、スベったっていうやつなのだろう。

スベった私は終わった。

もう帰りたい。

穴があったら潜りたい。

ないなら、今すぐブルドーザーに乗って穴を掘りたい。

私の精神状態はもう最悪だ。

始まる前からボロボロだよ。