「お隣から美味しいチョコレートもらったのにあげないわよ?」
「食べたい」
どうやらそんなこともないらしい。
ケンとトモカから貰ったケーキと、お隣から貰ったというベルギーチョコを綺麗に平らげた。
お腹を十分に満たしたし、幸せ。申し分なく美味しかった。
特にベルギーチョコ、あれは何個食べても飽きない美味しさだし毎日でも食べたい。
言い過ぎ?そんなことはない、それほど美味しかったんだから。
食べ終えたあたしは、麦茶をごくごく飲みほしていたらお母さんが近づいてきた。
「愛」
「何?」
「ケーキも買ったの?」
「あー…あれはクラスメイトに貰った。明日16歳の誕生日だから」
「ちゃんとお礼言った?」
「言ったよ。あたしを何だと思ってるの」
“礼儀のなってない娘”と返されたときは一瞬殺意がわいた。
娘なのに、アンタの娘なのになんてことを言うんだろう。
でもお母さんは嘘よ嘘、と言ったので冗談だということは分かった。
「で、明日は一真くんとデート?」
「ブブッ…!」
「ちょっと、汚い!」
何で知ってんのよ!
少し吹いた麦茶を手の甲で拭うと、お母さんを睨みつけるように見た。
デートするのを知ってる理由は、一真から娘さんを1日借り増すという断りのメールが届いたらしい。
一真、そんなことメールしなくていいって言ってんのに。
一真は律儀な人だから。
同い年だというのにしっかりしてるから、たまに本当に同い年かを疑ってしまう。
「デートはどこに行くの?」
「一真が知ってる」
「何時に来るの?」
「10時って言ってた」
10時に迎えに来るとは言ったけど、そこに行くかだけは教えてくれなかったなぁ。
どこに連れて言ってくれるんだろう?
一真、バイクの免許取ったから後ろ乗せてくれるって言うし。
___ドキドキ
一真の後ろに乗れるんだ。
___ドキドキ
一真の後ろに乗るのはあたしが初めて。
___ドキドキ
ヤバい、心臓五月蝿い。
あーもう、1年以上も付き合っててこんなにドキドキするなんて。
一真、一真。
一真好き、大好き。
一真___かずま…?
「一真…て誰?」
一真って…一真って…。
「あっ…」
一真はあたしの恋人じゃん。
「ちょっと、今あたしどうしたのよ」



